「・・・なんでだろ」



両手に料理を持って、テーブルに置く三木くんが、私が溢した言葉に振り向いた。



「どうしたんですか?」


「さっきの質問、なんであんなのと付き合ってるんですか?って・・・なんでだろうと思って」


「ああ・・・そんなに気にすることないですよ。あんな質問、ただの気まぐれですから。」



ただの、気まぐれ・・・・

に、見えなかったのは、私の気のせい?



「そんなことより、料理、冷めますよ?」



わ、いい匂い!

テーブルの上には、まるでお店で出されるような見た目のトマトリゾットが並べられていた。
あの材料で、これを作ったのか、すごい・・・。



「いただきまーす」



スプーンですくって、湯気を上げるそれに息を吹き掛ける。
しっかり冷まさなければ、ただでさえ猫舌の私は舌をやけどしかねない。

よし、そろそろいいかな。

ぱくっ・・・

あつっ!

でも・・・・



「おいひい」


「・・・そう、ですか」



あれ?
てっきり「当然です」とか言われると思ったのに。
またそっぽを向かれてしまった。

本当、掴めない人だなぁ。
悪い人ではないんだろうけど。


あ、ちゃんと冷ましたはずなのに、舌やけどした。



「いててっ」


「・・・どうかしました?」


「舌、やけどしちゃった。でも、大したことないから」


「見せてください」


「え!?」



彼は、背けていた顔をこちらに向けて、顔を近付けてきた。

同じソファーに座っているだけでも、緊張するというのに、これだけ顔が近いと・・・心臓がもたない!

耐えきれず、今度は私が顔を反らす。

と、顎を指で捕まれてしまった。
さっきより、ぐっと距離が近付く。

三木くんはもっと、自分がイケメンだという自覚を持つべきだ。
さっきからずっと無表情だったくせに、急に心配そうな顔するなんて、ずるすぎる。



「はやく、舌、出して?」



な、なにその言い方!
こんな、三木くん、知らない。

突然のタメ口に、ただでさえ上がっていた脈拍が急上昇する。

なんで、このタイミング?
ていうか、なんでこんなに、色っぽいの?


でも、大丈夫だからと繰り返す私の言葉は全て、跳ね返されてしまう。

これは、大人しく従わないと、終わらないかも。