そうだ。

何か話題を考えよう。
話をして、仲良くなってしまえば、この沈黙も苦にならないかも。

なにもない天井を見上げ、視線をさ迷わせる。


ううん・・・

三木くん・・・三木くんといえば・・・



「あ、あのさ、」


「・・・何ですか?」


「三木くんって、恵美ちゃんと付き合ってるんでしょ?」



恵美ちゃんというのは私たちと同じサークルの長澤まさみ似のかわい子ちゃんのことである。
彼女が前回か前々回の飲み会の翌日に、三木くんと寝た、という話を意気揚々としていたのを思い出したのだ。
恵美ちゃんが三木くん狙いなのは勿論知っていたので、美男美女カップルだ、とひそかに思った記憶がある。



「べつに、付き合ってないです」



が、彼の口から出た言葉は予想外のものだった。
視線をゲームの液晶画面に注いだままの、至って真剣な表情。
その口調からも、それが嘘ではないというのが伺える。



「・・・でも、こないだの飲み会終わりに・・したんでしょ?」


「・・・・あぁ、そのことですか」



彼は慣れた手つきでゲームの電源をオフると、私の方を見た。
急に視線がぶつかったものだから、心臓が高鳴る。
ビージーエムがなくなり、静かになってしまったことで、余計に鼓動が早くなっていくのが分かった。



「しましたよ、彼女の部屋で」



だからなんだと言わんばかりのすまし顔で、三木くんは答えた。



「でも、付き合ってるとかではないです」



淡々と、彼は続ける。
付き合ってないのに、できる人なんだ。
チャラチャラしてそうには見えないのに・・・なんか意外。

でも、人には誰だって、意外な一面くらいあるものだ。
それに、恵美ちゃんとしたのには、何か事情があるから、かもしれないし。
まあ、彼女のほうは付き合ってる気満々みたいだったけど。

三木くんって、恋愛に関しても、ほんとドライ。
あまりにモテすぎると、冷めてしまうものなのかな。



「そんな意外そうな顔、しないでください」



簡単に、私の心を見透かしてしまう。
私ってそんなに、分かりやすいだろうか。
顔に出るタイプって、よく言われるけど。