「どこいくの?」
布団の中で、彼女がそう言いかけて口をつぐんだ。
聞いたところで意味がないと、悟ったんだろうか。
それとも、僕に何か興味を持たせるための計算?
その可能性もまだ、ないわけじゃない。
だめだ。
こんなことをいちいち考えてしまう時点で僕は、駄目なんだ。
頭を振って、余計な考えを拭い去る。
適当な部屋着に着替え、何気なくテレビをつけると、クリスマス定番の曲が、耳に飛び込んできた。
そういえば。
確か今日はクリスマスイブか。
こんな日に仕事が休みなのは絶望的だが、もう、最近はそんなことすら何とも思わなくなった。
クリスマスがつまらないイベントだと気付いてしまったのは、いつからだろう。
「名前、なんてゆうの?」
後ろから、彼女の声。
なんの前触れもない、質問。
少し、戸惑う。
「杉、です」
「杉・・・?下の名前は?」
「湊、です」
自分の名前を人にいうのは、何だか恥ずかしくて、苦手だ。
自分の名前が好きじゃないというのもその理由のひとつにある。
苗字も名前も漢字一文字ってなんか中国人ぽいし、もっと男らしい名前が良かった。
「湊、か。いい名前だね。」
そんな、よくある誉め言葉。
容姿や性格に誉める点が見付からないときによく用いられる方法だって、僕は知ってる。

