慧が話し掛けてきた。 私は、目を再び本から離し、慧に 「何?」 と尋ねる。 すると、 「好き。」 とだけ言い、私を抱き締めた。 私の思考は一瞬にして停止した。 心臓がドクッ ドクッ と、いつもより早く鳴る。 そして、私は、我に返り慧を突き放した。 慧は一瞬悲しそうな顔をしたけどまたすぐに戻り、 「返事はまたで良いから。」 そう言い、図書室を出ていった。 私は、慧の悲しい顔を思い出すと、胸がチクリと痛んだ。