作り話のフラれ話に一区切りついたところで、私は覚悟を決め、ユウトに「嘘ではない」話を切り出した。


「私さ、今回のことが原因ってわけじゃないけれど、実家に帰ってお見合いしようと思って。」

「え?」



「両親の勧めでさ。相手は商社に勤めてる人で送ってもらった写真見る限り男前だし、なんて言うか、今日みたいに失恋で嫌な想いするのも疲れちゃってさ」


「そう。良かったじゃん。これでサヤカもセレブな奥様の仲間入りってことか。

フラれた直後にそんな事言い出すのもなんとなくだけどサヤカらしいよ。」



どんなに時でもユウトは明るく、そして優しく話を聞いてくれる。


ユウトも私のような面倒な人間が離れることで、きっと嬉しく思っているに違いない。


なによりユウトの恋の時間をこれからは邪魔をしなくて済む。


そう思うと少し心の痛みが和らいだ気がした。



「ビールください」

「え?」


「なによ?」

「飲むの?」


「今日ぐらい良いじゃない。フラれた勢いではなくセレブの仲間入りするお見合いも控えてるんだから。少し気が早いけど祝杯みたいなものよ」

「良いけど、後で倒れるようなことしないでよ? 前に飲んだ時も大変だったんだから」


「大丈夫だよ ビールぐらいなら」

「本当かよ?」



そうやって二人で笑いながら私はユウトと過ごせるカウントダウンをただ待つのみだった。


最期となるユウトの笑顔だけを記憶にやきつけ、時間だけが残酷に過ぎていく。