そしていつか来る日がやってきた。
いつ来てもおかしくない日は今日だった。
ばけものは鉄格子から出てきた。
鎖は短くなった。
目隠しは外された。
ばけものは怖くなかった。
群衆がいくら叫ぼうとも、石を投げようとも。
ばけものは人間とは違うから。
怖くなんてなかった。
ただ、何故か、声が聞きたかった。
いつも来ていた声。
今日はいない。
迎えに来たのは声じゃなかった。
ばけものは不思議だった。
声はばけものを迎えに来ると思ってた。
姿が見れると思っていたのに。
声は来なかった。
怖くなんてなかった。
いつもばけものがやっていたことだ。
どうなるのか知っていた。
ばけものに順番が回ってきただけだ。
怖くなんてなかった。
怖くなんてなかった。
怖くなんてなかったけど。