そんなある日。
声が聞こえた。
鎖と共に目隠しもされたから、見えないのだけれど。

「死刑だって」

そう、聞こえた。
知っていた。
そんなことはとうにしっていた。

「どんな気持ち?」

声の言葉には疑問符がついていたけれど、ばけものは話してはいけないらしい。
話すための器官は奪われた。
ばけものは話せない。

「何か言ったらどうなの」

話せない。
ばけものはせめてそれを声に伝えようと首を振った。

「ああ、そっか、話せないんだっけ、つまんない」

つまらないのはばけものだ。
面白いことは何もない。
声は動ける。
声は食べれる。
声は見れる。
それだけで楽しいのに。
声は贅沢だ。