背後からゴッという鈍い音が聞こえ、遠藤がよろめいた。

その隙に振り返ると、そこには見覚えのある青年が立っていた。
「川端くん?」
川端国生は以前私の担当をしていた新人編集者だ。
彼の手には金属バットが握られていた。
よほど緊張しているのだろう、肩で息をしている。
遠藤は、失神しているのか私と川端の足元でぐったりとしている。
「警察を呼びました。もう大丈夫です」
私は彼にありがとうと言おうと思って口を開きかけたところで、意識を失った。


そして、めがさめたら、このびょうしつだったというわけだ。
めがかすむ。このにっきのじがよめない。
どうしたのだろう。
こすってもこすっても、かすみがとれない。

さっき、かわばたくんがおみまいにきてくれたが、
めのまえに、しろいもやがかかってしまったようになってしまって、
ちゃんとかおをみれなかった。
かれのかおをおもいだしてみる。

きのう、わたしをたすけてくれたときは、
わたしもどうてんしてしてしまっていたから、
よくみていなかった。

かれのかおが、おもいだせない。

めのまえがどんどんしろくなる。
まぶしい。
まるでひかりにつつまれているようだ。
つよいひかりのなかで、
すべてのりんかくが、
うしなわれていく。

わたしはひかりにつつまれる。