12月22日

ここはどこだろう。

今、私は薄暗いアパートの一室に居る。
家具も何もない6畳くらいの広さのワンルームだ。
窓の外にはシャッターがおろされ、その隙間からわずかに光が差し込んでいる。
その明かりを頼りに、今これを書いている。
玄関の鍵は焼き切られ潰されていて、内側からは開けることが出来ない。

親に「忘れ物を取りにマンションに戻る」と伝えて、昨日マユりんの家に行った。
私のためにマユりんが危険な目に会うのが許せなかったからだ。

まだ新築のデザイナーズマンション。
そのエントランスで「505」と部屋番号を押すと、マユりんの声がスピーカーから響いた。
エレベーターで五階にあがる。
吹き抜けを回り込み、一番奥、
「早乙女」のプレートのある部屋のインターホンを押そうとしたそのとき、
何者かに羽交い絞めにされた。
振りほどいてやろうと思って両手を伸ばすと、首筋にちくりとした痛みがあって、
それからの記憶がない。

間違いなく、あの男だ。
あの男は私をマユりんの家の前で待ち伏せし、変な薬を使って、ここへ閉じ込めたのだ。

私は、どうなるのだろう。
マユりんは無事だっただろうか。

まだ頭がふらふらする。
猛烈にのどが渇いたので水道の蛇口をひねったが、水は一滴も出てこなかった。

ここはどこだろう。

私は耳を澄ましてみた。
道を行きかう車の音がする。
遠くでクリスマスソングが聞こえる。
マライア・キャリーのあの歌だ。

風が強い。
寒そうな音がこの部屋を取り囲んでいる。

轟々と吹き荒れるビル風の音の中、
足音が聞こえた。

足音は徐々にこちらに近づいてきている。
少し足を引きずるような、
粗野な歩き方。

ビニール袋が擦れる音もする。
一歩、一歩、
だんだん近づいてくる。
あの男だ。
私は息を殺した。

足音は、
この部屋の玄関の前で立ち止まり
かぎをぽけっとからとりだして
どあのかぎあなにさしこみ
どあのぶをひねり
へやの・・・