12月20日

アキラから電話があった。
あの男に私の居場所を聞かれたとのこと。
アキラはギリギリ分かるか分からないかのラインで喋ってしまったのだという。

私は電話越しにアキラを責めた。

そこまで口が軽いとは思わなかった。

多分、あの男はマユりんの家の住所を突き止めているだろう。
あの男の執念深さを知っていれば、ちょっとの手がかりととなるようなことも洩らさなかっただろう。
私は、アキラにその辺をきちんと説明しなかったことを悔いた。

これでは結局マユりんにまで害が及んでしまう。
私がここまで逃げた意味がなくなってしまう。

さっきマユりんに電話をしたら、今は北島さんの家に泊まっているのだという。
これから帰るところなのだという。
私はマユりんに事情を説明し、なんとか家から遠ざかるようにお願いしたが、マユりんは頑として聞かなかった。
自分が説得するのだという。
どうせそこまで突き止められているのなら、私があの男を説得するのだと言って聞かない。
それは危険だと止めたが、
「ミドリは、去年もう酷い目にあっちゃってるから、あんま無理して欲しくないのね。私だって、友達は大事にしたいのね」と言って電話を切られた。

私のために、私の大切な誰かが傷つくのは耐えられない。
私は私を取り巻く人たちには幸せであって欲しいのだ。
世界がどんなに暗い夜の中にあっても、私の周りだけは光り輝いていて欲しいのだ。

エゴだというなら、そう思うがいい。

私は太陽ではないから、そんなに多くの人たちを照らすことは出来ない。
私の手の届く範囲だけしか、私は思いやることが出来ない。

マユりんが心配だ。
彼女が私のために傷つくようなことがあってはならない。