鬼セカイ


この話をしていた僕の眼前には悲しそうな…いや、哀れんでいるのか。
そんな顔をした遥がいる。

それを見てどうしようもない気持ちになる。

変な空気が部屋を包んでいる。

だが意外にも、この空気を変えたのは遥だった。

「なぁ、真雄。」
僕の方を見ずに言った。

その呼び声に正直ビクッとした。

それでも
「ん?どこかおかしいお所でもあったか?」
と、焦りを隠して少し目を背ける。


「あぁ、ちょっとな、
その東夏って子さ、鬼じゃなかったのか?」

そして、当たり前だ。と言わんばかりに答える。

「あぁ、東夏は鬼じゃない。東夏には妹がいて、その妹が鬼の力を受け継いでいる。」
説明した。

「へぇ、」
違和感のある返事の仕方。



……で、その妹はたしか、一つ下って言ってたから今年で高1のはずだ。


………アレ?

……………まさか。

「たしか苗字は紫鬼(しき)だったよな?」
そう訪ねる。


だが、その質問に何も答えない。

だって、今、頭の中では最悪のことを考えていたから。

できれば嘘であってほしいような。


でも、ま、さか…………。


「今回の入学式にいた鬼の一人が確かそんな名前だったと…………」

その時

ガラッ!!!

と、ドアが勢いよく開く。

遥のはなしは打ち切られた。
と言うより本人(?)が先に来た。


「おやおや、ご本人の登場か?」

遥は、のんきにそんなことを口に出している。





間があいて。
そして、ようやく彼女は僕を見ながら口をひらいた。



「あなたを……殺します。」
と、その彼女が言う。


だが、話をまだ理解出来てない僕は冷や汗を流し、ただただ目の前の彼女を見ることしか出来なかった。




「は?」
ようやく出た声だった。