鬼セカイ


「ヒィィ」
ガキ共が泣きながら頭を抱えている。

当然だ。
さっきのボール状の黒い球を試しに撃ったのだから。

ガキ共に打ったわけじゃない。

近くの川。

爆発音。
そして、水しぶきが僕とガキ共と彼女にかかる

「真雄!ねぇ、真雄!」
彼女は必死に僕を呼ぶ。


「やめてぇ、殺さないで、」
そして、ガキ共からだらしない声が漏れる。

殺すとか言ったけど、本当はそんなつもりなかった。
少しビビらして謝らせれば良かった。

それだけだったんだ。

撃つつもりはないが手をガキ共に向ける
すると、
「ごめんなさぃ、もうしないから許してください。」
と、言いながら土下座までしてきた。

気分は悪くなかった。

許すことにした。

「おい、東夏、」
「な、なに?真雄」
怯えたように返事をした。

「お前がビビってどうすんだよ、大丈夫。殺さない。」
そう言うと彼女は安心したような顔になった。
そして
「うん!ありがとう!」
笑顔で返事をする。

その顔をみると何だか自然と笑顔になれた。

「帰ろっか。」
僕は彼女にそう言った。

「うん」
彼女は手を伸ばして来た。

手をとる。

照れくさくて遠くを見ていた。

「うわぁぁぁあ!!!!!」
後ろから、怯えていたはずのガキ共の声が聞こえた。

振り返ると僕の方に何か刃物を向けて走って来ていた。

理解するのに時間がかかった。
そして、まだ理解の出来てない僕の前には彼女が立っていた。

「………………」

言葉が出ない。何を言えば良いのかも分からなくなった。





彼女は刺された。



その瞬間、やっと理解できた。

彼女が刺されたのは誰でもない僕のせいだ。


僕がアイツ等を殺そうとしなかったら……。

でもそれはもう、遅かった。


「うっ………」
彼女が声を出した。
刺されたのは右下腹部だった。

ただ、出血量が多い。



ガキ共は
笑いながら逃げて行く。

追いかけようとした。


止められた。


体制を崩し、倒れた彼女に。

彼女は息を荒くしていた。
「追いかけちゃ……ダメ………だよ。」
綺麗な笑顔で言ってきた。

文句の一つも言えない。

何で………笑ってるんだよ………。


「東夏………?何でこんな事したんだよ」
聞かざるおえなかった。

この質問に彼女は答えた。

「真………雄が……死んじゃう………って、思った………から。」
泣きそうになる。

いや、実際泣いてた。
涙がながれて彼女の顔に落ちる。

「ねぇ、真雄………最後に聞いてくれる……?」


それに対し僕は震える声で言う。
「は?嫌だね。最後に……なんて、」
涙は静かに流れる。

「お願い!………聞いて…………!!」
必死な目だ。
その目には涙が溜まっていた。

「…………………」
喋れなくなる。

「私ね…………真雄が…………好き。」
息を切らして、涙目になる彼女はそう言った。



「え……………」
言葉を失った。


彼女は続ける。

「好き………大好き………私………ずっと……守ってもらってた。
だから、私も……真雄……守りたかった………。
……最後に願い…………叶った………」
苦しそうに話を続ける。


自然と本音が出る。
「……東夏……僕も…………好きだよ。」
涙が流れる。

「ねぇ……真雄。」 
「……………」
「………好きだよ。」
耐えられなかった。


「ごめん、ごめん、東夏。ごめん、」
涙が止まらない。


「………ありがとう…………真雄。私も………ごめんね…………ずっと………ずっと、愛してるから……………ね……」
そう言うと彼女は動かなくなった。


「……東夏?ねぇ、東夏ぁ。返事……してよ。ねぇ…ねぇ……。
東夏、……ごめん…………ごめん」

もう、彼女は動かない。
涙の後だけ彼女には残っていた。