鬼セカイ




そう、僕が10歳の頃の話だ。

ある晴れた日の午後だった







僕は遊んではいけないと言われているため一人で川辺に寝転がっていた。

後ろからは楽しそうな子供たちの声。
女の子も男の子もみんな仲良く遊んでる声。




「………………羨ましいなぁ」

つい声が漏れてしまう。

軽いため息をつき目を閉じる。


「ねぇ君、一人なの?」
女の子の声がした。

だが僕は目を開けなかった。
何故ならその声が僕にかけられたモノだと確信がなかったから。

「ねぇってば、聞こえてるんでしょ?」
薄目を開ける。

「あ、起きた?」
笑顔で言う少女。

驚いた。


顔に沢山の傷があった。顔以外にも手や足に。

でも本当に驚いたのはそこではない。
彼女の綺麗さに驚いたのだ。

傷がこんなにあるのに、どうしてそう思ってしまうのかは自分でもわからなっかたが、ただそう思った。

顔立ちは整っていて、いわゆる美人だ。

でも一番は
普通じゃない髪の色、彼女の髪は紫だった。

長く腰まで伸びている。

風になびき輝いている。

そんな感情を隠しながら訪ねる。

「何か用?」

「君、名前は?」
「え………えっと、黒鬼 真雄。」
少し悩んだが答えた。

「へぇ真雄って言うんだ!あ、私は東夏、紫鬼東夏(しき とうか)。よろしくね!」
そう言って自己紹介をしてもらった。

「よ、よろしく。」
そう言うと彼女は強引に手を引っ張り握手する。

少し照れくさかった。



そこから約2ヶ月一緒に過ごした。

そして僕は彼女にひかれていった。

楽しかった。


そしてある日の事
一緒に話をしていると後ろからいつも通りガキの声がした。

普段なら無視することだった。

普段なら、




でも、今回は違う。

声が、普段よりすごく近かったから。

すぐ後ろにいるようなそんな……………

振り返った時には遅かった。


殴られたのだ。
もっと警戒するべきだった。

打ち所が悪かったのか、目眩がする。

そして僕は地面に倒れた。

ガキ共は眼前の彼女に殴りかかっている。

「いやぁぁ、あ、やめ……て」
彼女が叫ぶ。

助けたい。

僕の頭からは血が流れる。

こんな血の量、普通ならもう気絶しているだろう。

だが僕は鬼だ、
回復は一般とは比べ物にならなだろう。

約30秒。十分だ。血はもう止まっていた。

そして一歩前に出る。

「おい、」
ガキ共に声をかける。

予想どうり、返事がかえってきた。
「ああ?なんだよお前?」
彼女を殴っていた手が止まる。

その一瞬を逃さない。
地面を蹴る。

ものすごい勢いで彼女の前に行く。

多分ガキ共に見えていないのだろう。

そして彼女を抱き寄せる。

彼女は少し慌てた様子でこっちを向く。
「ま、真雄?」
苦しそうにしゃべる。

「しゃべるなよ、僕があいつらを殺すから。」
頭に血が昇っていた。

「ダメだよ!真雄!殺しちゃ、ダメだよ。」

そんな声僕には聞こえない。

僕はガキ共に手を向ける。

その手からは黒い渦を作りながらボール状に形を変えるものが蠢いていた。


鬼の力だ。