時計は午後3時を指していた。
普段ならそのまま帰るのだが、残念ながらこれから部室に行かないといけない。
遥から大事な話がある、といわれたから。
正直な話、面倒くさい。
そんな事を考えながら歩いているといつの間にか部室の前まで来ていた。
遥は多分もう、来ている。
いや、絶対来ている。
何故なら、この付近には人がいなかったから。
説明になってなかったな。
えぇっと、先輩の鬼=遥は青鬼(せいき)の名を持っている。
青鬼とはそのまま〝青の鬼〟と言う意味で結界などを得意としている。
そして今、人除けの結界が張られている。
だから人がいない。
だが、そんな事どうでもいい。
はぁ、と溜め息をしてドアを開ける。
「おぉ、真雄。遅かったな。」
予想的中。
部室には遥がいた。
スルーして椅子に座る。
「で?何の話だ?」
聞いてみる。
「なにって…………お前の突っ込み聞きたいなって思って」
笑いながらいってくる。
そんな事で僕を呼んだのかよ!
と、思ってしまう。
そして答える。
「いやだ。」
すると遥は文句を言ってくる。
無視する。
そう、僕は本来突っ込み気質なのだ。
少しのボケに反応してしまう。
だが今はしない。
疲れるから。
イライラするから。
でも一番はそれを見て遥が遊ぶからだ。
「で、話は?」
打ち切って聞いた。
「はぁぁ、新入生の事だよ。」
窓を見ながら話始めた。
「それが?」
訪ねる。
「可愛い子多かったよな。」
だから、そのために呼んだのか!?
無表情を保つ。だが、正直耐えられない。
イライラMAX。
「特にぃ、あの一番前の右から、4番目とかぁ、」
続けている。
「おい、」
遥を呼ぶ。
「あとは、前から二列目の二つ結びの子とかぁかわいかったよな!」
まだ続けるか。
呆れた。
僕は椅子を立つ。
「おい、真雄。何で立つんだ?話は終わってな………………」
「お前のせいだろ!わざわざ来た僕の気持ちも考えろよ!しかもお前の趣味を語るなぁぁ!!」
我慢できずに突っ込んでしまった。
その瞬間遥の目が輝いた。
背中にいやな汗が流れる。
「あ……………」
思わず声がでてしまった。
「真雄!ようやく突っ込んでくれたな!」
「突っ込まれて何で笑ってんだよ!」
言い返して、ニヤニヤした遥を叩いた。
「帰る!」
そう言い放ちドアに手を掛ける。
「おい、真雄。新入生に、」
「もぅいい………」
僕が言い終わる前に遥が口を挟んだ。
「〝鬼〟がいる。」
間があいて。
「え……………?」
ようやく話を理解した。
そして、それは、僕にとって最悪を語った。
嫌な記憶がよみがえるから。
彼女が死んだ、嫌な………記憶。
すると、さっきとは比べものにならないような気持ち悪い汗が流れる。
「おぃ、大丈夫か?……………真雄?」
遥が心配してきた。
「いや、だ、大丈夫だよ。」
焦っていた。
だから、多分大丈夫そうに聞こえてない。
事実言葉とは異なっていた。
全然大丈夫じゃない。
「真雄、お前絶対なんかあるだろ?」
聞かれた。
「それは…………」
汗が流れる。
「言えよ。」
優しい口調だ。
沈黙。
諦めて、言うことにした。
そして、口を開く。
「僕は…………殺したんだ。人を……殺したんだ。
大切なあの子を…………殺したんだ。」
遥の顔色がかわった。
「え……………?」