翔吾に先導されて、屋上に来た。 天気の怪しい空の下には、誰も集まらない。 当然のように、誰もいなかった。 いや、普通の屋上にはあるはずのフェンスがここには無いから、もしかしたら開放されていない場所なのかもしれない。 「美紅。美紅の大事なものって、何?」 まっすぐにフェンスの無い、奥に向かった翔吾が、振り向きながら私に尋ねた。 「私の、大事なもの?」 唐突の質問過ぎて、さっとは出て来ない。 それでも、頭の中をひっくり返して、大事なものを探す。 いや、探さなくてもある。 目の前に。