スッと、寄ってきた翔吾が、黙って私を腕の中に閉じ込めた。
ぎゅっと回った腕が、しっかりと私を抱き寄せる。
「バカだなぁ。ほんと、バカだよ。美紅は。こんなになるまで我慢してさ」
私の顎に軽く手を当て、上向けさせる。
翔吾の瞳が、心配そうに歪められ、私の目の下辺りを指がくすぐる。
「…?」
「最近、ずっと寝れてないだろ?ほら、ここ。クマになってる」
気付かなかった。
そんなこと、意識出来なかった。
「ほら、そばにいてやる。だから、少しでも寝ろ」
肩を抱き寄せられて、すっぽりと翔吾の腕の中に収まり、体重も預けてしまう。
「あ、そうだ。美紅」
「何?」
「ヘッドホン借りていいか?」
いつの間にか、ずっと前はよく使っていたヘッドホンを持っていることに首をひねりながら、頷いた。

