「行ってきます」
「気を付けてね、美紅。早く帰っておいで。雲行きが怪しいから、傘は持って行ってね」
玄関で、お母さんに見送られながら家を出た。
向かう先は、もちろん翔吾の入院している病院。
見上げた空は、お母さんの言う通り、どんよりと厚い雲で覆われていた。
家から近いバス停で、丘の上行きのバスを待った。
誰もいないベンチには、まるでそこで首を吊ったかのように、違和感なく女がいる。
「地縛霊…」
やはり、感覚は未だ麻痺してるらしい。
グロい死に方をした女を見つめて、思わず笑う。
「キイテ…キイテ…」
嫌だ。
絶対に、聞かない。
アイノウタは、絶対に。
ポッ_____
ポッ_____ポッ_____
ザァ____
怪しかった雲行きは一気に崩れて、雨が降り出した。
バスはまだ来ない。
傘を持っていてよかった、と思いながら傘を広げ、ベンチに座った。

