大嫌いな最愛の彼氏【短編】

「はぁ!?彪河が!?」

「ぅん……」


嗚呼〜〜と唸る鎌樹。

鎌樹は彪河と仲が良い。愛華とは逆で、彪河の一番の親友だ。

だから、彪河の事情は、鎌樹が一番知っているのだ。

そんな鎌樹が彪河の事で唸るなんて、何か深い訳があるのだろう。


「つか…何でそんな事になったんだよ?」


顔をしかめて、愛華に問う。


「それは………」


愛華は、その時の状況を、詳しく鎌樹に話した。

話を聞いた後、鎌樹が益々顔をしかめたのは言うまでもない。


「なぁ〜んでお前は、彪河にそんな事言っちゃうかなぁ?」

「何でって…そう思ったからに決まってるじゃん!」


『ったくよ〜っ』と、頭を抱える鎌樹。


「お前だけは、彪河にそういう事言っちゃダメなの!」

「何でよ!?」

「あ…いや、あのな?俺の口からは言えないんだよ…。これは、彪河本人じゃないとダメなんだ」


鎌樹は急に真剣な顔になって、こう呟いた。


「え……どういう意味?」

「だから、そのまんま意味!明日、彪河がきっと教えてくれるよ」


『彪河が』と聞いた瞬間、愛華の顔が強張った。


「嫌だ!彪河なんかに逢いたくねぇよ……」

「いや、ちゃんと逢えよ。そうじゃないと、お前、逃げてる事になるぞ?」


真顔の鎌樹は、一つ一つ言葉を選びながら話す。


「お前が彪河に逢いたくないのは解るよ。でも、そうやって避け続けたって、どうにもならないだろ。逃げたって意味ないんだよ」


『だからちゃんと白黒つけろ』そう付け加えて、悪戯にニヤリと笑った。


「うん…解った。ありがと、鎌樹」

「いや?なんかこぉんな可愛い愛華、久しぶりに見たし♪」

「はぁ!?ウゼェよ、馬鹿鎌樹!」


そんなこんなで、愛華のモヤモヤは、少しだけ薄れたのだった。



その日の夜……


「おい彪河。……嗚呼………うん……解ったよ、宜しくな」


鎌樹は彪河と何やら電話中。

何を話していたかって?

それは、後に解ります……。