君影草

「結衣ッ!!!」

ガラッと大きな音を立てて扉を開く

と、中にいた顔見知りの女医が振り返る

「こんばんは、北河さん」

「先生、結衣はッ!?」

肩で大きく息をしながらも急き立てるように促す北河に、そっと優しく微笑む

「大丈夫よ。さっきまで起きてたんだけど、また眠っちゃって」

まだ意識が戻ったばかりだから仕方がないの

結衣の意識が戻った

そう病院から電話があった

「…、結衣は、」

言いたいことは、聞きたいことはたくさんあるのに言葉にならない

「そばにいてあげて、そのうちまた起きるはずだから」

そう言って結衣のベッドの横を北河に譲る

信じられない足取りで近寄ったベッドの中の結衣は、依然と何ら変わらない

本当に目覚めたのだろうか

もし、もし、本当に目覚めたのなら

今すぐにでも名前を呼んでほしい

そう思ってしまう