「-っ」
行くよ、そう言おうとした北河のスーツのポケットでスマホが静かに振動し始める
人の少なくなった社内に響く低いバイブ音
「…、悪い」
目をやったディスプレイに表示された名を見て北河が平静を装いつつ智樹の腕をほどく
通話ボタンを押しながら二人から少し離れて耳を澄ます
「もしもし、…、はい。……え?」
驚愕に彩られた声に智樹と奈々絵が顔を見合わせる
「はいっ、すぐ行きます。…はいっ」
こくこくと頷きを返す北河はすでにカバンを手に廊下に出ようとしている
「おい!北河!!」
後ろから智樹の呼ぶ声がするけれど、そんなものにかまっている暇はない
ばたばたと廊下に響く足音と早鐘を打つ自分の鼓動の音がキンキンと耳に響く
エレベーターを待つのももどかしくて非常階段を駆け下りてタクシーを拾う
信号や渋滞で止まる度に携帯に目をやって時間を確認する
少しでも早くついてほしい
焦る気持ちを裏腹の交通状況
それが一層北河を苛立たせる
思い出すのは一年半前だ
行くよ、そう言おうとした北河のスーツのポケットでスマホが静かに振動し始める
人の少なくなった社内に響く低いバイブ音
「…、悪い」
目をやったディスプレイに表示された名を見て北河が平静を装いつつ智樹の腕をほどく
通話ボタンを押しながら二人から少し離れて耳を澄ます
「もしもし、…、はい。……え?」
驚愕に彩られた声に智樹と奈々絵が顔を見合わせる
「はいっ、すぐ行きます。…はいっ」
こくこくと頷きを返す北河はすでにカバンを手に廊下に出ようとしている
「おい!北河!!」
後ろから智樹の呼ぶ声がするけれど、そんなものにかまっている暇はない
ばたばたと廊下に響く足音と早鐘を打つ自分の鼓動の音がキンキンと耳に響く
エレベーターを待つのももどかしくて非常階段を駆け下りてタクシーを拾う
信号や渋滞で止まる度に携帯に目をやって時間を確認する
少しでも早くついてほしい
焦る気持ちを裏腹の交通状況
それが一層北河を苛立たせる
思い出すのは一年半前だ

