静かな朝…我ら仙鳥は、陽が昇り始めるよりも早く目覚める。そして胸元に大きな篭を架け…私も偵察のついでに、森の中の野林檎や野葡萄などの果実を採る準備をする。

私は仙鳥の仲間らと共に静かに、カルムの暗く続く大きな洞穴をゆっくりと翔び進み、森の中へと出る。

まずは果実を集めよう。果実は朝露が乾かないうちに採ったほうが美味しいのだ。

私は果実の樹々を確かめながら翔び廻り、良さそうな果樹を見付けては、その枝に停まって翼で優しくもぎ取る。







しばらく果実採りに夢中になっていたら、ようやく空がちらちらと明るくなってきた。私は自分の採った果実の篭を仲間の1羽に預け、カルムへと帰ってゆく仲間達と一旦別れた。

そして矢のように上空高くへと飛昇する。ふと森や海界を見下ろし…ある異変に気が付いた。

島の広い広い海岸のとある場所に、小さな帆船が一隻停泊している。…その近くには三角テントが2つ…。

…あれは…冒険者だとかいう人間達だ!間違いない!!

私は静かに急いで森に戻り、気配を欠き消して…海岸に面する森の入り口へと向かう。

人間達がテントから這い出て立ち上がり背伸びをし、体中に鉄鈑や革板を巻き付け、出発の準備をしている。
その頃には、私は奴らの間近の巨樹の枝に停まり、静かにその様子を見下ろし監視していた。


『ピギーーーィーッ…!!!!』


体ごとカルムの方へと振り向き、私は大きく咆哮した。ここからカルムまでは10km以上と離れてはいるが大丈夫。我らの遠鳴くその声は、それでも十分仲間達の元へと届く。


『ん、何だ?今の鳥の鳴き声は…?』

『アルフレッド、もしかして…今のが霊鳥《ククルカン》の鳴き声なんじゃないの?』


弓矢を背負った人間の女が、小剣を腰に携えた男にそう言った。


『馬鹿言えよジェニファ。ここはまだ森の入り口だぜ?霊鳥共がいるのは森深くの奥の奥だろ?』


どうやら人間のその数は5人。その中に、我ら森に住む者達が一番忌み嫌う者…布衣を頭から足の先まですっぽりと被り、妖し気な古木の長杖を持った者が…なんと2人も。

あの禍々しい杖を持つ人間達は、森の中だろうが何処だろうが所構わず遠慮なく、具現化させた『四元魔術』とやらの妖弾を何度も射ち放ち、森を一瞬にしてめちゃくちゃに破壊してしまう。

或いは雷雲を上空に喚び、自然の理(ことわり)に逆らい強制して落雷を起こし、やはり森を破壊する。それらが原因で、この美しき森が火焔の海と化することも珍しくないのだ…。

『我々は冒険者だ!』…だから何だというのだ?我々にとって、侵略者たるお前達のような『人間の冒険者』なんてのは『破壊の欲鬼』でしかない。