君のイナイ季節

「すごいね〜」

思わず漏らした感想。

ファンの人ってこんな場所でも見ただけですぐにわかるんだね。

「ん〜、そうだね」

拓海くんはどことなく上の空で答えた。

その目線の先を追う。

3人、こちらを見てニヤニヤしている。

拓海くんの目が、鋭くなった。

「これから帰るときに、カーブの多い道に入るけど」

拓海くんが耳打ちしてきた。

「絶対に手を離さないで。バイクを倒す方向に自分の体を傾けて。太股で僕の体を思いっきり挟んで」

私は殺気立つ拓海くんに少し怯えながら、頷いた。