君のイナイ季節

「ごめん…」

1分遅刻…

私の声で振り返った拓海くんはクスッと笑って

「案外ルーズなところがあるんだ」

グサッと突き刺さる、その言葉。

「朝5時に起きて準備したらこんな事に…」

最後の方はゴニョゴニョとしか言えなかった。

「5時って…」

半ば呆れ顔の拓海くん。

そりゃ、そうだろうね〜

泣きたい…


「でも」

私は顔を上げる。

「可愛いよ、その洋服も、髪型も」

自分の顔が赤くなるのがわかる。

「そんなに赤くなるとこっちまで恥ずかしくなる」

拓海くんはそう言うと、そっと右手を差し出した。

私は左手を差し出す。


初めて繋いだ手は冷たくて、ひょっとしてかなり前から来ていたんじゃないかと思う。


照れているのかさっきから顔を合わせてくれないし、黙っている拓海くんだけど。


私はキュッと少し手に力を入れてみると拓海くんもキュッと握り返してくれた。


しばらく、私達は黙って歩いていた。