君のイナイ季節

「見ててよ」

決勝レース前。

少し時間があったので拓海くんと話していたんだけど。

拓海くんはそう呟いた。

「サーキットへ来た事、後悔させないようなモノを見せるから」

その横顔は決して学校では見せることのない真剣で自信に溢れる顔だった。

自分の闘志を胸に抱いて、彼の目はきっと遠く先にあるチェッカーフラッグを見つめているのだろうね。


…カッコイイ。


同い年とは思えない。


何を今更、私は思うのだろう。


前からいいな、とは思っていた。


でも。


こんなにカッコイイなんて思ってもみなかった。



「きっと、勝ってみせるよ」


自信に満ち溢れた目は一段と輝いている。



私は笑って頷いた。