君のイナイ季節

「お待たせ…」

時間通りでも、拓海くんはもう着いている。

こういう時、気を使うんだな…
拓海くんは待つの、平気みたいだけど。

「さあ、行こう」

拓海くんは私の手を握りしめた。

ひんやりした手。

結構待っていたのかな、と心配する。


「おお、結構人がいるね」

拓海くんは人の多さにびっくりしていた。

二輪のイベントは四輪と比べて盛り上がりに欠けるんだけど、それでもまあまあ人がいた。

通りすがりの人も見ていく影響もあるだろうけど。


「拓海〜!!」

いきなり後ろから抱きついてきた男の子。

茶髪で目のクリッとした子だ。

「光、久しぶり!」

住吉 光くん。

大阪出身で拓海くんより1歳年上。

今年から世界を舞台に戦っているライダーだった。

「オフも大変だね」

拓海くんが労うと

「そやな。でもちょっとでも広めなあかんし」

光くんは屈託ない笑顔を見せた。

「まあ、ゆっくりしていきや」