(((え~、●×行きの電車が参りまぁす。白線の内側に……)))
やる気のなさそうなアナウンスが頭上で響く。
ホームの中の人数は疎らで、みんな思い思いの顔をしてる。
そんな中、私は今年の春に買ったばかりのお気に入りのピンクの合皮バッグを肩からかけ、待っていた。
恰好は非常にラフなもの。チュニックとジーパンと、あと編み上げショートブーツ。
電車がホームに入ってくる。
ぷあん、と間抜けな音がホーム内に響き渡る。
通勤時間や学生達とはズラしたおかげか、この電車はさほど混んでいないようだった。
扉が開く。
人が中に入る、入る。
私は一番最後に足を踏み入れた。
先頭から2番目の車輌。
手前が空いていたのでラッキーと腰を下ろす。
膝上に置いたバッグを開き音楽プレーヤーを探していると、ふと横から視線を感じた。
下の方からくる、強い視線。
見ると子供。
一緒に居るのは母親だろうか、私よりさほど変わらなそうな人が「すみません…」と苦笑する。
「あ、イエ」
子供みたいにごちゃごちゃバッグの中を漁っていれば、そりゃ目につくよなぁ。
私も苦笑いを浮かべて、やっと手に掴んだそれを引っ張りだし耳にイヤホンをすると、バッグを閉じた。
適当に選曲した後で、バッグを背中の後ろに置く。
そうして、邦楽が鼓膜に浸透する中、車窓から見える景色を眺めた。
お姉さま…は、確か最初の一年だけ専門学校行って、でも続かないとかで今年はフリーだったはず。
いきなりビックリするかな。
でも前から突然会いに行って、それで遊ぶこと多かったから。
だからきっと大丈夫だよね……。
終電だから、のんびり揺られていよう。
そんなこと考えている間に、…私はすっかり眠気に包まれていた。


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