みずみずしい葉を何枚も箸に挟んで口に入れる。
動揺してるからかドレッシングを忘れた。
けど美味しい。
少しの苦みと甘さと。
ナマ感がたまらない。
「うん。今日も美味しいよ。ルカさん、流石だね」
じっとこちらを睨むように見ていた眼に微笑みながら言う。
「あなたにファーストネームで呼ばれたくありません」
「ごめんごめん。バリスさん」
ヴァがうまく発音できないからとバリスで呼ぶ私に彼は舌打ちをして(行儀悪い!)目を逸らした。
「大丈夫か? 具合が悪いなら横に「大丈夫大丈夫。次、ぐみの木でなに作ろうかなーって考えてたの」
パパにそう言ってから、墓穴を掘ったことに気がついた。
まずい、この雰囲気で明日ずる休みするなんて言えない……!
「……あ……うん、だいぶ先になるけど考えてる」
苦笑いでその話を切り上げて、あとは話しかけるなというオーラを発しながらもくもくと箸をすすめた。
あ、あ、あ……どうしようドウシヨウどうしよう。
なんかいろいろもやもやしてきちゃった。
今から考えてちゃあれだけど、こんなんじゃ明日は行けそうにない。

「風呂入ったらちょっとは気分が落ち着いたかも……」
首に巻いたタオルで時々汗を拭いながら部屋へと戻る。
戻る際、角を曲がって見えた廊下に広がる光景に車椅子を一旦とめた。
「やっ……る、ルカさんこんなとこで…!」
何も見えない聴こえない。
気にしないで行こうと思ったが、なにぶん腹の中にもやもやしたものが広がり始め急いで進路変更。
怒りたいところを全速力でハンドリムを回す力に変え、踵を返す。
普段、花のように愛らしく笑う菫があんな声を出すなんてそんなことは、中々慣れるものじゃないから。
「(ルカ・ヴァリス…)」
未成年の妹に盛る変態執事。
パパもなんで辞めさせないのか。
私は奴が嫌いだ!

結局、休むことなんてできなかった。
ルカ・ヴァリスか小関さんを選ぶなら、後者だから。