父と母は共に冒険者だった。
とはいっても歴史に名を残すような大それたことはしてなくて、ごくごく普通の平凡な地道にダンジョンを攻略していくだけのパーティーだったらしい。
母のお腹に子が宿ったと同時に冒険をやめた二人は、静かな村に小さな家を建てた。
だが生まれてほどなくして子供は死んでしまう。
哀しみに沈む二人に一人の占星術師が近づき。
“終天星の導きのままに行きなされ”
老婆の言葉を頼りに旅に出た二人はある祠にて宝を見つけた。
呑めばどんな願いも叶う月の雫石。
それを母は口にし、再びそこで結ばれた二人の間に産まれた子供がセナフィラだ。

母が願ったのは。

たくさんの子供たちではなく、ただ一人の子供の無事と成長。
その子の命がいつまでも永久に尽きぬように。
それはたとえ自分たちが死んだあと、よき伴侶と出逢い子を成しても。
この世界が、惑星が滅びたとしても。



………なんて。
なんて勝手で放漫な願いなんだろう。