ヒョイと後ろから顔を覗かせた龍くん。
「一緒に帰ろってば」
「うん?なんか取り込んでたみたいだったから。私なら気にしないで………」
本当は気になる。龍くんと真奈美さんが何を話していたか。
気になるけどそれ以上に……二人で居るのを見ていたくない。だってとてもお似合いに見えてしまったから。でもこんなことを考えてしまう自分がすごく嫌だった。
「いいの?」
「え?」
それでもエレベーターに向かって歩を進めていた私の腕が後ろに引かれて強引にその場に止められた。。
「俺あの人と一緒にいていいの?南ちゃん一人で帰っちゃうの?」
「えっ………と」
チラッと龍くんの背中越しに見える真奈美さんは………腕組みして壁にもたれてこちらを睨み付けてる。
「俺待ってたんだよ?南ちゃんと過ごす初めてのクリスマス、ずっと楽しみにしてたんだよ?」
「龍くん……」
「南ちゃんは?そうでもなかった?」
いつもの龍くんの穏やかな優しい瞳に今は寂しさと悲しさが込められてる気がした。
-傷ついた顔して……でもこんな顔させてるのは私だ-
未だにコンプレックスが邪魔して素直に龍くんに甘えることができない私。それでも不満一つ言わないでいつも私を優先させてくれる。
美人で要領よくなんでもこなせる真奈美さんには私なんか何一つ敵わないけど。龍くんに我が儘言ってもいいのかな……今日この時初めて誰かと張り合おうと思った。
「私も楽しみにしてたんだよ。あの………私と……帰ろ?」
これが精一杯だった。緊張で鞄を持つ手が震える。
龍くんの向こう側で相変わらず痛い視線を送って来る真奈美さん。
どうしよう………


