「ったくアイツら……」





横になりたかったから良いタイミングではあったけど………なんか複雑。






「さっそくお見舞い来てくれるなんていいお友達ですね~」






なんてニコニコしながら枕元の下にあるボタンを操作してベッドを戻してくれる。
見上げると胸元の名札には『中野南』の文字。





-南……って感じじゃねーな-





はぁっと溜め息をついて目をつぶる。



ふとおでこにあったかいフワフワした感触を感じて目を開ける。



乗っていたのは看護婦の手のひらだった。





「何?看護婦さん……」






照明が眩しくて目を細める。ふと目が合った。
綺麗な瞳。ブスではないんだな、太ってるだけで……






「えっ、いやあの………顔色良くないなって。疲れた?」






慌てて手がどけられた。あったかいぬくもりだけがおでこに残される。血の気が引いた冷たいおでこにはなんでかとっても心地よかったのに。








「ん~………少し眠る」





目をつぶる。何気なく動かした手がちょうどそこにあった看護婦の手に当たる。ビクッと退けられるのがわかった。





-なんだよ。あからさまに。感じ悪くねぇ?-






夢うつつにそう考えた時だった。





「きゃっ………!」






と小さい悲鳴とぐんっと腕を引っ張られるような感覚。



なんだ!?と目を開けた瞬間、目の前の光景がスローモーションのようにゆっくりと流れる。






点滴の管に足を取られてバランスを崩す看護婦の体。





「危な………っ」






咄嗟の事で頭で考える間もなく体が反応した。ガバッと起き上がって腕を差し出す。そこにのし掛かる看護婦の全体重。グッと腹に力が入り縫った傷に痛みが走る。
でも相手は巨漢でも女性だ。離す訳にはいかない。





「ぐっ……」
「ごめんなさい!」