好きな人ができた。
片時も忘れた事がないくらい好きで好きでたまらない。




自分でもびっくりする。そういう趣味があったなんて。

今までずーっとサッカー一筋だった。彼女がいなかった訳じゃないけど、サッカーと彼女どっちを選ぶ?って聞かれたら迷わずサッカーを選ぶ、その程度の付き合い。
周りには爽やかくんだのイケメンだの結構騒がれたけど、自分じゃ全然そうは思わない。わがままだし普通にスケベだしさ………




高校三年の夏、朝から痛かった腹が学校に行くバスの中で激痛に変わった。周りの乗客が気付いて運転手に知らせてくれたけどもうそれどころじゃなかった。
どのくらい蹲ってたか…痛みで意識が朦朧とする中、耳に届いた可愛らしい声。









「大丈夫?痛いのはどこ?」
「………………腹」





真剣な顔でテキパキ対応してくれる俺より少しだけ年上っぽい女性。気持ちを落ち着かせるような穏やかで優しい顔とシャツ越しに肩に触れる小さな手の感触と甘いいい匂いが印象的だった。




「大丈夫だからしっかり!」





その声に励まされてなんとか頑張れた気がする。

やっと来た救急車に運ばれて病院でくだった診断は『盲腸』。 生まれて始めて手術をした。










気がつくとベッドの上にいた。隣りにはおふくろと兄貴と妹の姿。『心配させんじゃないわよ』とこずかれる。この時、おふくろが偶然通り掛かった看護婦さんが全部手配してくれたんだよって言ってた。看護婦?……いたっけ?





いろんな線と点滴とマスクをつけられてなんか大手術をした気分。でも次の日の朝には点滴以外全部取れて、普通の病室に移された。

さすがサッカー馬鹿なだけあるな。基礎体力付けまくったもん。







その日は一日眠かった。とにかく気付くと眠ってる状態。


またウトウトしてると、





-コンコン-






「検温してましたか?片岡くん…………」