-バタン-






玄関の閉まる音が虚しく部屋の中に響く。
私はヘナヘナとその場に座り込んだ。






「終わっちゃった……………」






目の前の白黒のラグがみるみる霞んで見えなくなる。






「ライト……嫌だよ、ライトぉ~……」






溢れる涙。やっぱりどんなに頑張ったって無理な話だったんだ。

何か月か前に頭を過ぎった不安。この後6年も不安なままライトを待ってられる?いつか別れてしまうなら………それが今になっただけ。




そう自分に言い聞かせても、何度涙を流しても胸の中の悲しみは消せない。拭っても拭っても止めどなく溢れる涙。





-好き。ライトが好き-






私はこの先一生ライトの事が忘れられないと思う。それ程好きだったの。





あのフワフワの髪も
細い首筋も
しっかりした身体も
長い腕も
大きなあったかい手のひらも
甘い香水の匂いも
私を呼ぶ優しいアルトの声も
切なそうに細められた瞳も




全てが愛しい。






こんな気持ち今になってわかったって彼はもうここにはいない。私のものじゃないんだ。きっと今ごろラブちゃんの元にいるんだろう。
私にしてくれたようにラブちゃんと…………






それを考えただけで体の中がみるみるどす黒いもので覆われていく。吐き気が込み上げてくる。










「ぐっ………!」







精神的なものだから気分だけなんだけど……………



胃が痛い。ギリギリと絞られてるみたい。吐き気も治まらない。
何度もトイレに駆け込んだ……







結局夜になってもライトから連絡が入ることはなかった。





私は一晩中、段々酷くなる胃痛と吐き気に苛まれ、しまいには起き上がることもできずにただひたすらベッドに蹲っているしかなかった―――――――