「じゃあ俺行くな。くれぐれも無理すんなよ」
「分かってるって」



手を軽く上げて小走りで去って行くライトを見送る。なんだってあんなに心配性なんだろ。



「水谷医師(せんせい)相変わらずお優しいですね」


ひょっこり顔を出した南ちゃん。最近産休明けたばかりなのに実に元気に働いてくれてる。五歳の亜依(あい)ちゃんと一歳の斗羅(とら)くんを育てながらサッカー選手の旦那さんの健康管理もきっちりこなしちゃって。

「優しいっていうよりちょっと過保護よね」
「それだけ愛されてるんですよ」
「そうかな」


私達が婚約してすぐ南ちゃん達の結婚が決まったって聞いて凄くビックリしたけど、同時にとても嬉しかった。私達程の年齢差はないけど、それでも同じような境遇のカップルがうまくいくと私まで幸せな気持ちになったから。

龍弥くんの入社を待ってめでたくゴールインしてから今まで、南ちゃん夫婦とは仲良くさせて貰ってるけど……
もぅ絵に書いたような幸せぶりに何度も助けられた。
南ちゃんは龍弥くんのチームの試合がある日は必ず子供達と応援に行く。『近くに居ることで少しでも龍くんの力になりたい』っていうのがいいよね。南ちゃんの想いが良くわかる。逆に龍弥くんもインタビューを受ける時必ず『応援してくれる子供達といつも支えてくれる妻のおかげです』って言うの。全国ネットでだよ?六年経った今でもラブラブな二人。いつもお互いを想って労って慈しんで……

私もいつかこんな家庭が築けたらなって思ってた。



それももうすぐ実現する。



婚約してから六年間、変わらず私を愛し続けてくれたライトと。そしてこれから産まれてくる私達の赤ちゃんと。
私達なりの幸せな家庭を築けると思う。





ねぇライト。実はもう赤ちゃんの名前決めてるんだよ。




-水谷宝(たから)-





男の子でも女の子でもこの名前。私達の宝物――――――



【END】