「先生どうしたの急に呼び出して」

「風太くんに会いたかったから」



鵜野山先生の手が風太の頬に行く。

そのまま親指で頬を軽く擦ると、風太がそれに応えるように鵜野山先生の手の上に自分の手を重ねた。




(ここから離れなきゃ)



頭の中では分かっているのに、足に接着剤を付けたかのようにここから動くことが出来なかった。




「ねぇ風太くん。先生じゃなくて、いつもの呼んでる呼び方にして?」

「でもここ学校だから」

「大丈夫。今は授業中だから誰も来ない」

「……」




少し悩んだようにした風太だったけど、すぐに口を開く。





「ゆうか」





そう言った瞬間、鵜野山先生の顔が風太の顔に近づいて行くのが見えた。




ガンッ


鈍器で頭を叩かれたみたいに頭にキた。



さすがに見るのも辛くて、やっとその場から離れて駆け出した。



廊下を思いっきり蹴る。




ずきずき
がんがん
ぐらぐら
ぐわんぐわん



さっきよりも頭が痛くなった気がする。











――――――風太を好きになったのは高校に入ってからのことだった。





中学生の時は他に好きな人もいて、それなりに付き合ってた時期もあった。

中3の時は半年ぐらい片想いしている人がいて、高校に入ったときもまだ好きだった。
けど、噂でその人に彼女ができた、そう聞いた時は自然と気持ちは薄れていった。



そんな、気持ち的にフリーの時、夏に入ったばかりの時期。