風太とは物心ついたころから一緒にいた。
だから風太の癖や好きなものとか性格とか私が一番よく知っていると思う。



笑った時に出来るえくぼ
きれいに片付いた部屋
読書が好き
意外と真面目
優し過ぎる
料理が出来る
子供が好き
字が綺麗
牛乳を飲む前に振る
ミルクティーが好き


他にも知っていると自負出来る。



でも知らないこともある。
知らない一面もある。


新しい風太に触れる度もっと知りたくなる。
もっと風太に触れたくなる。



大好きだから。
すごくすごく大好きだから。


この想いが始まったのは高校一年生の時で、今まで一緒にいたわりには遅い始まりなのかもしれない。

でもどんなに遅くとしても私は風太のことを好きになっていたと思う。


それは一緒に過ごしていく中で、風太の良さにいつかは絶対気づくから。


きっと好きになるから。





………風太とは本当にずっと一緒にいたなあ。


考えていてしみじみそう思う。




けどそれは幼なじみとしての関係であり、男女の関係ではない。



きっと幼なじみの関係を終わらせる時が来るのならそれは今だ。



今、終わらせよう。








「好き、大好き。風太が好き」





真っ直ぐ目を見つめる。



と、重ねていた私の右手を風太側に引っ張られると私の顔は風太の胸に当たった。


そして風太の手が私の背中に回る。





「……好き。朱里が大好き」




耳元で聞こえた大好きな声。


大好きな人に大好きだと言われることがくすぐったくもあり、恥ずかしくもあり、嬉しい。



一回ぎゅ、と抱きしめ合うとゆっくりと風太の顔が近づいてくる。




優しい優しいキス。