デトックス、デトックス
心の中で繰り返す。
風太の家が見えないように下を向いて歩く。
慣れた道だから多少前が見えなくても帰れるから。
静かな夜の中、私のキャリーケースのローラーの音だけが響く。
(きっともうすぐ家だ!)
さすがに顔を上げようとした時だった。
視界に男の人の靴が入ってきた。
その靴からは足が二本伸びている。
一瞬不審者!?とか思ったけど、すぐに違うと気づく。
だってそれはよく‘彼’が履いている靴だったから。
優しく私の腕に手が触れた。
思わず泣きそうになったけど、ぐっと堪える。
だって、必死に忘れたじゃん。
忘れて、忘れて、忘れられなくて、忘れて、忘れられなくて、忘れて、忘れて、忘れて、忘れて、忘れて、忘れて
「朱里…………」
―――――ああ、でもやっぱり忘れられない。

