この人は俺がもうこれ以上何も言えないことを知っている。


そして、このまま鵜野山先生の言った通りに俺がなることを。





「何もないようね」





その言葉の後、鵜野山先生は俺の唇に自分の唇をつけた。















その日を境に鵜野山先生は俺によく電話をかけてきた。



俺に相談するのではなく、ただ普通に会話するだけ。

たまに会いたいと言われれば、俺はその言葉通りに会いに行く。


会う場所は夜のホテルがほとんどで、鵜野山先生の家には一度も行ったことが無かった。
彼氏にバレないよう念のため、らしい。





確かにバレたら終わりだ。


だってこれは浮気なのだから。

しかも生徒と先生という関係で。



だから俺も鵜野山先生とのことがバレないよう、女子と遊んでいるのことをアピールすかのように適度に女子と付き合った。
もちろん上辺で。


そしたら誰も俺と鵜野山先生が関係を持ってるってバレないだろ?
他の女子でカモフラージュされるから。





そんなことを二年続けてきた。
俺のなかで鵜野山先生に‘そういう’感情を持たなかったとなると嘘になる。

でも朱里に感じた‘好き’とはちょっと違うと思う。



だけど確実に俺の中で鵜野山先生の存在は大きくなっていた。

同時に朱里への感情も小さくなっていっている気がした。


俺はそれでもいいと思った。


だって朱里にだけは鵜野山先生との関係のことを知っててほしいと思って朱里に話したけど、笑顔でおめでとうって言われたんだ。


それって俺には興味がないってことだろ?




なら、朱里への感情は無くなっていいと思った。