風太と会ったらきっと色んな思い出が思い出してしまう。
特に彼女としての思い出を。
そんなの辛すぎる。
“幼なじみとは付き合わない方がいいよ”
そしてその言葉が今になって痛い程わかる。
別れなきゃいいと思っていたけど実際そんな上手くはいかないし、隣同士だから嫌でも会ってしまう。
気まずいなんて程じゃない。
酷だ酷。
だから風太と会わないこの状況は私にとって好都合で、風太のことを忘れるための良い機会になった。
小さな頃の幼なじみの時のことはしょうがないにしろ、風太を想っていた時のこととかキスしたこととか。
そういう風太への恋心の思い出はきっぱり忘れると決めた。
そして一週間後、家に帰る時は前みたいに幼なじみに戻る。
そう決意した。
だって風太はもう私じゃない違う人のもとへ行ってしまったのだから。
「朱里ちゃん?」
気がつくとなつきさんが心配そうに私の顔を見つめていた。
「あ、すみません。ご飯食べますね」
「朱里ちゃん、今ここに来た時と同じような顔してたわ」
「え」
ここに来た時、というと一昨日の事だ。
あの時はまだ風太への想いをきっぱりと断ち切れていない時。
そんな時と変わらない顔をしていたなんて、まだまだ風太のことが忘れられてないのかもしれない。
もっと、ちゃんと忘れなきゃいけないのに。
「何があったのか私は知らないけど、この家にいる時に嫌なことは全部忘れて勉強に集中してね。ここをある意味心の息抜きとして思ってもいいから」
なつきさんは笑顔で微笑んでくれた。
その笑顔と言葉に元気が出る。