電話の相手は、風太に聞かなくても分かった。
「出ないの?」
「……出ない」
風太は震えているケータイを持ったまま出ようとはしない。
「いいの?相手は鵜野山先生でしょ?」
「……」
黙ってるからきっと図星なんだろう。
結局風太は本当にその電話に出ず、ケータイの震えは止まってしまった。
でもすぐにまた鵜野山先生は風太に電話をかけると思う。
その時には私はもう風太の目の前からいなくならなきゃいけない。
「………風太」
「何?別れ話だった聞かないよ」
珍しく風太は私を睨んでくる。
それにこんなにだだをこねている風太は初めてだ。
今まではほとんどと言っていいほど私の意見を聞いてくれたから。
本当に珍しい。
でもね風太。
風太は自分の気持ちに気づかないといけないよ。
無理して私と付き合わなくてもいいんだよ。
だから最後に見せてほしい。
「風太、笑って?」
「笑う?」
「そう。私風太の笑顔好きだから」
小さい頃から好きだった風太の笑顔。
それを私だけに見せる最後の笑顔を見せてほしい。

