なんとなく別れたって言われた時から言うだろうな、とは思っていたけど…


鵜野山先生の目は想像以上に本気だった。




きっと本当に風太のことが好きなんだ。


でも私だって好きだ。
鵜野山先生に負けないくらい好きだ。





「でも…」

「でもじゃないの。返してほしいのよ彼を」

「返すだなんて……まるで風太は物みたいな扱いじゃないですか」



そんな扱いは酷すぎる。


でも鵜野山先生は私の言葉なんてこれっぽっちも響いてないようで。




「屁理屈言わないで」




今までに聞いたことのない低い声だった。

目つきもさっきよりもさらに鋭くなっている。



きっと私は鵜野山先生を怒らせたんだ。


そう思うと急に焦りが出てきた。


相手は大人だ。
彼氏を脅す位のことをやってみせるんだから、きっと私にも仕打ち仕掛けてくるはず。




鵜野山先生は顔を私に近づける。



「明日、風太くんに連絡するわ。だからそれまでに別れていてね」



ニコッと鵜野山先生は笑ったけど、私は笑えない。

それに鵜野山先生の笑みの裏には私への憎みがある。




「もし別れてなかったら………」




鵜野山先生のその言葉の続きを私は容易く想像できた。


やっぱり私に何かする筈なんだ。





何も言い返すことが出来ずにただベッドに手をつき座って鵜野山先生を見上げている時、コンコンとドアから聞こえてきた。



「どうぞ」




普段の声に戻った鵜野山先生はすぐに私から離れる。




「以上よ」




ちらり、と私の方を向いて言った。


きっとこれは早く出て行っての合図だ。