鵜野山先生がまた一歩私へ近づく。
私もまた、一歩下がる。
「彼氏にバレた時は焦って風太くんと別れてしまったけれど、やっぱり私には彼氏よりも風太くんだって気づいたの。だから私が暴力を振るわれている証拠を集めて、会社や警察にバラしてやるって脅してやったわ。そしたらすぐに別れてくれたの。
確かに彼氏は地位的にも、経済的にも良かったけれど、中身がダメだった。まあ両親には申し訳ないけど、仕方ないわ、両親も納得してくれるはずよ」
お、脅したなんてびっくりだ。
確かに悪いことをしているのは鵜野山先生の彼氏だから、鵜野山先生が悪いってわけじゃない。
でも私だったら脅すまでの勇気はない。
誰かに助けを求めるぐらいだったら出来るけど。
(でも、そこまでして別れたってことは……)
「そろそろ気づいたようね」
キュッと口角を上げた鵜野山先生。
今度は一歩だけじゃなく、二歩、三歩、と近づいてくる。
「私には風太くんが必要なの」
どんどん近づいてくる鵜野山先生から逃げようと私もどんどん後ろへ下がる。
けど、後ろを確認してなかったから、
「っ!」
ベッドがあることに気づかずに、ベッドへ尻餅をついてしまった。
もう、後ろへ逃げられない。
さっきよりも私と鵜野山先生身長差が大きく開く。
そして鵜野山先生は私を見下ろして言った。
「風太くんと別れてほしいの」
――――やっぱり、そう言われると思った……

