そりゃあたった数週間前のことだから完全に忘れることはないだろうけど、それは覚悟で行こう。
完全に忘れるまで、待とう。
「今では朱里だけだから」
そう言った風太は今まで見た中で一番、ダントツに男っぽくて、保健室で見た鵜野山先生といた時たいに、いやそれ以上に男っぽく感じた。
辺りはすでにオレンジを通り過ぎて暗く染まり始めている。
街灯が無ければよく周りは分からない程だけれど、風太の顔は近くにあるからよく見えた。
(これはきっと――)
だんだん近づいていく顔。
私は自然と瞼を閉じた。
風太と初めてのキス。
とても幸せな時。
このままずっと幸せだったらいいのにって思ってしまうくらい。
その時ふと中学三年の時の塾の先生が言った言葉を思い出した。
あの時の先生の名前は覚えてないけど、ふと思い出してしまう“幼なじみとは付き合わない方がいいよ”。
先生、私幼なじみと付き合っちゃったけど、別れないように頑張るから。
そしたらいいんでしょう?付き合っても、いいでしょう?
12月の冬、冷たい公園のベンチの上でそう思った―――――――――――――

