風太の心の中には鵜野山先生がいる。



ほら、今だって空を見ている。

夕暮れ時の空を。



私は気づいたんだ。


風太が空を見ている時は鵜野山先生を思い出していることを。

だって、ちょっと悲しい顔するから。



今だって、ね。




「朱里……」

「ん?」



今の風太の現状を分かっているのに、少し寂しくなって黙っていると、風太が小さく私の名前を呼ぶ。





「俺、ちゃんと朱里のこと好きだから」





まさかの言葉に、言葉が出ない。

ただ、ただ、驚くだけ。





「付き合った時は若干ノリも入ってたけど、他の女子と付き合う時よりも軽くは考えてなかった。だって今までずっと一緒にいて、特別だったから」

「風太…」

「あの時、少しは好きだと思ったし、今では結構好きだよ」





その言葉に思わず涙が出そうだった。


けどグッとこらえて、ずっと、実はずっと聞きたかったことを聞く。




「鵜野山先生のことは?」



私のその言葉に一瞬顔が歪んだ気がしたけど、すぐにいつも通りに戻る。



「完全に忘れたわけじゃないけど、あの人にはあの人の事情もあるし、ほとんど吹っ切れた。これは本当に」



それを聞いてホッと胸をなで下ろす。

風太は嘘を言っているようには聞こえなかったからきっと信じていいはず。