ドアを開けるとマフラーをぐるぐるに巻いた風太が待っていた。
「もしかして急いで来た?」
風太の問にコクコクと頷く。
寒い中風太を待たせるのも悪いし、それに早く会いたいって気持ちがあったから、階段を転げ落ちる勢いで来た。
走ったせいで前髪崩れてないよね?
とりあえずささっと前髪を直してみる。
すると不意に風太が首に巻いていたマフラーを私の首に巻いていく。
その時鼻腔に風太の香りが通り抜けた。
「急ぎ過ぎてマフラー忘れてる」
マフラーを巻き終えると風太はそう言った。
確かにマフラーの存在を一切忘れてた。
私のためにマフラーを貸してくれたことにドキドキ。
けど今度は風太の首が寒そう。
「でも風太寒いよね?私今すぐ自分の持ってくるからこれは返すよ」
せっかく巻いてくれたマフラーを解こうとすると風太の手がそれを阻止する。
やんわり重なった手。
そのまま風太が私の手を掴み、今度は手のひらを重ねる。
急な展開についていけず、私はフリーズしてしまった。
(私は今、手をつないでる?)
しかも風太と。
のろのろと状況を把握すると一瞬で顔が熱くなった気がする。
風太は私と手を繋いだまま歩き始めた。
「とりあえず行こう」
行き先は知らないけど、私も風太に合わせて歩き出す。

