そいつは隣の家の二階のベランダで電話していた。
「…うん。大丈夫。え?……大好きだよ」
‘大好きだよ’そう言った彼は寒さのせいか、それともその言葉のせいか、はたまた電話の電波先の彼女のせいか、頬がほんのり紅くなっていた。
―――嫌な場面見ちゃったな。
電話していた奴は通話が終わったのか、耳からケータイを離した。
その時ふと下を見て、私を見つけた。
「おーおーこれは受験生の朱里(あかり)さんではないですか」
受験生を強調して言ったところが腹立つ。
「おーおーこれは推薦で受かって余裕ぶって彼女とお電話していた風太(ふうた)くんではないですか」
「てめー聞いてたのか」
「ばっちりばっちり。最後の言葉には鳥肌たったけどね。ただでさえ寒いのに余計寒くなったよ。お詫びにカイロくれてもいいんじゃない?」
「ハラタツー」
…会話聞いてたことには怒らないんだね。
風太とは小さい頃から友達のような関係で、でも男友達の枠とはちょっと違うような関係。
きっとそれは私だけ、だ。
向こうは完全に私は幼なじみで、女友達の枠。
だって彼にはちゃんと彼女がいる。
公にはできない、彼女が。
風太とは小、中、高と一緒の学校で風太が誰と付き合ったとかは知らないはずがなかった。
嫌でも誰かが噂するから。
そんでもって風太はあの腹立つぐらい整った顔をもっていて、背も高くて、喋りも上手いからモテないはずがなかった。
現に今でもモテている。
腹立つ。
でもどの人も長くは続かなかった。

