「鵜野山先生はさ、‘本当の’彼氏に暴力振るわれてるんだ」
風太がそう言った言葉に驚く。
だって信じられなかった。鵜野山先生が暴力を振るわれてるなんて。
いつも綺麗で不自由なんてない人だと思ってたから。
「本当なの?」
「ああ。キズを隠すために服でカバーしてるから、普通は分からないけど」
…確かに、思い当たる事はあった。
夏の時や暑い日、鵜野山先生はいっつも長袖を着ていた。
私が暑くて仕方ない時、長袖にパンツスタイルの時もあった。
私はてっきり日焼け対策なのかと思ってたけど違ったんだ。
なんだかあの時そう思った自分が申し訳ない。
今申し訳ないなんて思ったって仕方ないのに。
「でも鵜野山先生は別れたくても別れられない。彼氏は大手企業の社員で、将来が期待されてる人らしい。
鵜野山先生は親のためにも今の彼氏と結婚することが一番で、彼氏も鵜野山先生が嫌いで暴力を振るってるわけじゃないから。寧ろ好きすぎて、らしい」
「……」
「その鵜野山先生が俺に助けを求めてきた。だから振り払うことが出来ずに二年以上経っちゃったんだけど…。助けって言っても彼氏の暴力を止めることなんて出来なかったし、大したことをしたわけじゃない。
それに浮気がバレた今ではもう何も出来ないし。
でも浮気相手が学校の生徒ってことまではバレてないから、良かったけどね」
良かったって言ってる割には喜んでる様子は見えない。
きっと別れたことは結構ショックだったのかもしれない。
あまり表情には出してないけど。

