悲しい人?
今の流れでいうとそれはもちろん鵜野山先生なのだろうけど、なんで悲しい人なのか全く分からなかった。
いまいちよくわからないまま、風太は続ける。
「俺さ、別れたんだ。鵜野山先生と」
‘鵜野山先生’
風太がそう言ったその言葉は何となく違和感を覚えた。
前に保健室で聞いた‘ゆうか’の方が熱ぽく、今は感情を入れてないように思えた。
「な、なんで?」
「バレたんだよ。鵜野山先生の彼氏に」
…………え?
鵜野山先生の彼氏は風太じゃないの?
それがバレたってどういうこと?
バレたもどうもこうもないよね。
「ああ、悪い。言ってなかったよな」
申しわけなさそうに風太は言う。
私の頭は混乱したまま。
「鵜野山先生は別に付き合ってる人がいるんだよ。結婚前提に。」
「え?」
混乱してた頭が整理される。
けど、それって……
「俺は鵜野山先生の浮気相手。だから本当の恋人じゃない」
そう言った風太は特別悲しそうな表情もせず、冷静だった。
それを見て私は何も言えない。
何でそんなことしてたの?とか、別れて正解だったよなんて言えない。
だから
「そっか」
それだけ、そう言った。

