笑ってください






ベランダに出ると風太が柵の手すりに腕を置き、暗くなった空をぼんやりと見つめていた。



なんだか話しかけずらくてそっと隣に行き、肘を手すりに置く。




「…朱里?」



ようやく私に気づいた風太が顔だけ私の方を向ける。


その顔は普段と同じむかつくほど整った顔。
体調が悪そうには見えない。




「今日、教室行ったらいなかったから体調悪いのかと思って」

「そっか。大丈夫元気元気」

「ならいいけど」



空を見上げると星がバラバラと散らばっていた。

けど変わったところはなく、なんで風太がさっきから空をずっと見ているか分からない。




「なんで教室に来たの?」

「ああ、そうだった。これ返しにきたの。もうすぐテストだし必要でしょ?」



持ってきた教科書を風太に渡す。
風太は貸してたっけ?と貸したことも覚えてないようだったけど。



「別に明日でも良かったのに」

「思い出した時に渡したくて。明日だったら忘れてそうだから」

「…そっか」



教科書を持ち、風太はまた空を見る。


私も何となく風太と同じ様に空の方を向く。