私が家の鍵をバックの中から引っ張りだし、鍵を回し、ドアを開けるまでの行程を、先輩は私の背後にたって、じっと見ていた。



「ほら、どうぞ。入ってください。」


「いや・・・まて」


「大丈夫ですよ、家の両親は今日、帰りが遅くなるみたいなんで。」


「それ・・余計にまずい、だろ・・・」



後ずさりする先輩の腕を引いて、半ば強引に家の中へ引きずり込んだ。

家に入って廊下を進んだ右側に、私の部屋がある。

ここには、友人は勿論のこと、家族でさえ入れないようにしてきた。

つまり、先輩が初めてのお客さん、というわけです。



「へぇ、漫画、たくさん・・・」



先輩が私の部屋を物珍しそうに眺めている間に、パソコンを起動させる。



「先輩は、本とか読みますか?」


「・・・・あんまり、」


「そう、ですか・・・私、あの、趣味で小説を書いてるんですが・・・」



うわ、うわうわ・・・

なに言ってるんでしょう、私


先輩に見せると決めたのに、いざとなると、急に恥ずかしくなってきました。


こんな話、今まで誰にもしてこなかったのに・・・でも

私が話せばきっと、

先輩も、心を開いてくれるような気がするから。