私は自分のお弁当を、先輩の前に差し出した。
「食べますか？」
「お、お前・・・えさで釣るつもりだな！？そうだろ？俺は騙されねーぞ！」
ほんの親切心だったのに・・・
見事に先輩には距離を置かれてしまいました。
先輩は、思ってたよりずっと複雑で、難しい人です。
私に何か、できることはないのでしょうか。
「お、まえ・・・」
「え！？なんですか？」
「い、や、なんでもない！落ち込んでると思ったから、その・・・」
もしかして・・・
「先輩、私のこと心配してくれたんですか？」
「心配なんかじゃねえ！俺のせいでお前がそんな顔すんのは、俺も、気分が良くない・・・だ、から・・・一口だけ、その卵焼き、もらって、やる」
「え！？」
「う、るせえ・・・早くしろ」
びっくり、した。
先輩に急かされるまま、震える手で箸を握り、卵焼きをつまんで、口を開ける先輩の元へ運ぶ。
私が卵焼きを食べさせるのを、口を開けながら待つ先輩が、また愛らしい。
緊張、します・・・
「どう、ですか？」
「もぐ、もぐ・・・これ、お前が作ったの？」
「は、はい！一応」
「そっ、か・・・」
・・・あれ？
感想は・・・・？
と思ったけど、
「もう一口」
と、先輩はまた口を開けたので、ホッとした。
美味しいって、言えばいいのに。
